2013年2月27日水曜日
嶋津家の施政哲学と北欧貴族の驚き
出典:篤姫を生んだ鹿児島こそ
スメル八千年帝国の理想郷だった
『言語復原史学会:加治木義博』
KKロングセラーズ
60~62頁
「3章 嶋津家の家系と施政哲学」
《嶋津家の施政哲学と北欧貴族の驚き》
「嶋津家の施政哲学と北欧貴族の驚き」
後世の本拠は言うまでもなく鹿児島市の城山の下に今も遺跡が残る、
城とは名ばかりの嶋津邸だが、この一見、無謀に見える無防備も、
「人は人垣、人が城」という国是でわかるように、
歴代藩主の武将哲学が、人を威嚇する、こけ威しの軟弱なものではなく、
戦うからには敵に肉を斬らせて骨を斬るという壮絶なもので、
それが今でも薩摩士魂と呼ばれて畏敬される独特の気風を残している。
それでも藩主は、本邸暮らしを賛沢として避け、
そこは公式の政治業務用の官庁として使い、
鹿児島で暮らすときは、
いま「磯の別邸」と呼んでいる
鹿児島市の東の外れに近い海岸にある屋敷を使った。
そこも、加賀の前田に次ぐ我が国第二位の大大名の邸宅としては、
信じられないくらい質素な邸である。
幸い戦火にも焼け残ったから、
戦後、ノルウエイから観光にこられた女性貴族を案内したことがあるが、
その質素さに終始、驚いていた。
それがなぜかを説明すると、今度は感嘆を繰り返し、
隅々まで入念にご覧になって、
特にトイレには絶賛を惜しまれなかった。
なぜかといえば、
そこは一般にイメージするような特別なトイレではなくて、
お座敷であって、
ただ違うところは便座があって蓋がしてあることくらいだが、
その蓋を取って穴の下を見るとアッと驚く。
そこは高くて、はるか下に便器が見える。
下は明るく、
風通しが良くて臭気がこもらず残らない構造になっているのだ。
彼女は感嘆して「世界最高のトイレだわ!」と折り紙をつけてくれた。
彼女にしてみれば、
世界を相手に戦った大国日本の大大名の邸宅だから、
フランスのルイ王朝の大宮殿のようなものを期待して、
戦後いち早く、
はるばると九州の涯までやって来られたと思うのだが、
その「宮殿」は想像を絶して余りにも質素に過ぎた。
その予想外の展開に、日本人の知性の奥深さをあべこべに教えられて、
非常な感銘を覚え、一時の落胆と後悔は、
予想外の教訓と出会った満足に変わった。
これでこそ遠く日本まではるばる来た甲斐があったと、
帰国後、国民たちに解説して聞かせる楽しい予感に、
もう既に酔ってしまった様子だった。
話は逸れたが、本題の篤姫の思想にも、
この外国貴族を感嘆させたほどの嶋津魂とか倫理観が、
濃厚に熟成していたからこそ、
維新の激動、婚家・徳川家の幕府崩壊、
明治新政府発進という未曾有の激動の中心にあって、
凄まじい精神的葛藤に翻弄され、責め苛なまれても、
そのストレスに負けて崩れることなく泰然として対処し、
ついに輝かしい生涯を全うしたのである。
「写真」磯 嶋津邸(岡田利美氏撮影)
「写真」磯邸での家族。右端が筆者
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